野口悠紀雄『戦後日本経済史』(新潮選書)

今週は
 (中学入試+大学入学共通テスト)×コロナ
で、わけわからん1週間となりました。しんどすぎ・・・。

 

というわけで、そんな中で授業準備のために10年ぶりくらいに読み返したのが『戦後日本経済史』。中公新書のベストセラー『1940年体制』を戦後史というスパンから整理したもので、2008年の刊行である。

帯には「比類なき経済成長を成し遂げ、石油ショックにも対処できた日本が、バブル崩壊以降、ジリ貧なのはなぜか?」とある。
日本経済はこのときからさらに14年経っても、この問題から抜け出せていない、ということだ。もう日本経済は、取り返しのつかないところまで来てしまったのではないか、と思わざるを得ない。

本書を読んで思うことが3つ。

(1)「一生働いてもマイホームに手が届かない。しかし、土地ころがしをすれば、労せずして巨万の富を手にできる。およそ何が不道徳といって、勤勉に働くことが正当に報われず、虚業と浮利と悪徳商法が際限ない富をもたらすことほど不道徳的な事態はない。これは人間の尊厳を傷つけるものだ。
 そして、実際、日本経済はバブルによって大きな損害を蒙った。この時代の経済力をもってすれば、日本人はもっと豊かな生活を実現できたはずだ。しかし、バブルによって資源配分が歪んだため、それが実現せずに終わった。「バブル時代が懐かしい。再来を望む」という人がいる。その愚かさに、私は怒りを覚える。
 80年代後半の日本は、ソドムとゴモラの町より道徳的に退廃した。神の鉄槌が振り下ろされたのは、当然のことだ。」(171頁)

(2)安倍晋三という人は、岸信介の政治思想的な面しか見ておらず、経済思想についてはまったく理解できていなかった(しようとしなかったのか、できるだけの能力がなかったのか?)。

(3)10年経っても読むに足る本は、やはりいい本だと思う。同じころに書かれた竹○平蔵氏の本がその隣にあるが、残念ながら、なかなか笑える。

(こ)