外山薫『君の背中に見た夢は』(KADOKAWA)

 大先生、ごめんなさい、週末いろいろとあって、PCの前に座れませんでした。

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 今週読んだ中で澱のように残っているのが、この本である。それはいい意味でというよりも、後味の悪さのせいだと思う。

 お受験小説といえば、城山三郎の『素直な戦士たち』が思い浮かぶ。子どもを東大に入れようというスーパー教育ママによって、「最高の英才」に育て上げられようとする長男と、それに付き合わされる夫、そして放ったらかしの次男の話。読書の予想を裏切らず、妻も長男も壊れてしまうのだが、最後はほっこりと救われる。
 同じお受験小説でも、本書にはそれがない。ひたすら小学校受験に向けてすべてをなげうって奔走する複数の家族の姿が、隣に立って見ているように淡々と描かれる。高年収夫と専業主婦の妻、代々慶應卒の家、パワーカップル、それぞれの家庭が必死にお受験に取り組み続ける。その描写には「これはフィクションなのだ」という逃げ場がなく、息苦しい。そして、細木数子のように上から目線で受験生の親を操るお受験塾の塾長は、受験産業新興宗教と同じようなものだと白状しているようなものだ。
 これが東京の姿かと思うと、気持ち悪くなる(実際に義妹が東京都中央区に住んでいて、お受験する保育園ママ友の話を聞くと、そういうものらしい)。

 文芸論になってしまうが、これははたして文学といえるのだろうか?
小説神髄的にはそうなのかもしれないけど・・・でもなぁ・・・)


 著者の外山薫氏のプロフィールは、1985年生まれ、慶大卒、としか書かれていないが、タワマン文学の「窓際三等兵」の中の人なんだとか。

(こ)