夏川草介『スピノザの診察室』(水鈴社)

保護者さんが来校されたときのこと。
「せんせー、差し入れ、どうぞ」
「ありがとうございます、どうしたんですか?」
「長五郎餅、本に何度も出てきて食べたかったんで買ったんです。おすそわけ」
というわけで、京都に半世紀暮らしていながら初めて長五郎餅をいただきました。
うすい餅皮でほどよい甘さの餡を包んだお菓子で、創業は天正年間らしく、秀吉の北野の大茶会で出されたそうな。

 

そして、お餅をいただいたからには、本も読まねばならぬ。
大先生が以前紹介されていたものである。(大先生ごめんなさい)

napo.hateblo.jp

 

内容の方はすでに大先生が紹介されているので省略。市井のしがない(?)病院に勤めているが実は内視鏡手術の神の手を持つDr.マチが主人公の、京都を舞台とする、命にまつわる4つの話。

 

内視鏡手術の描写は圧巻、これは本業の人にしか書けない。
ただし、ジェンダーという点からいえば、ちょっとアウト気味な描写が複数箇所。これは作者のジェンダー観のせいなのか、それとも医師の世界のジェンダー観がこんなものだからなのか。

マチ先生は大の甘党で、(北野の)長五郎餅と、(下鴨神社の)やき餅と、阿闍梨餅の3つを激推ししている。緑寿庵清水の金平糖やふたばの豆大福など、京都の銘菓が他にも次々と登場する。
夏川先生もお好きなんやろなぁ。

 

ちなみに、その保護者さんもお医者さんであり大学医学部の先生である。どういうふうにこの本を読んだのだろう。お餅のお礼かたがた、今度聞けたら聞いてみよう。

(こ)