松岡洋右『東亜全局の動揺』(経営科学出版)

 Facebookに毎日のように広告が届いているので、根負けしてクリックしたら、この本のサイトに飛んでいった。GHQが焚書処分としたとかいう煽りはさておき、ほんとうに松岡洋右が書いたものであることは間違いなさそうなので、本体無料送料負担(550円)で入手。

 申し込みを済ませると、一緒に動画はどうかと聞いてくる。今なら100円でいいらしいが、月2000円ほどの有料配信に切り替わるというのがしれっと書いてあった。いらないとクリックしたけれど、登録したメールアドレスにしつこく、もうビデオは見たかだの、これ以外の「日本すばらしい」系の広告が押し寄せてくる。

 これが愛国ビジネスというやつか。

 さて、郵送で本書が届く。1931年に松岡洋右がまとめた手記であり、サブタイトル「我が国是と日支露の関係・満蒙の現状」の通り、日本を取り巻く国際情勢を概観し、幣原協調外交を徹底的に批判しながら、大和民族が目覚めて東亜満蒙解放のために立ち上がれと勇ましく鼓舞する内容となっている。
 興味深いのが巻末の「校正後記」である。1931年9月15日に脱稿し、19日の早朝から最後の校正を手がけていたところ、届いた新聞で満洲事変勃発を知る。
「外交は完全に破産した。威力は全く地に墜ちた。・・・もう校正をする勇気もない。砲火剣光の下に外交はない。東亜の大局を繋ぐ力もない。休ぬるかな 噫!」

 GHQが焚書したというような内容ではまったくなく、驚くような新事実が明らかになるわけでもない。むしろ、こんなノリで外交を論じていたのであれば、そりゃ、ヒトラースターリンの掌で踊らされるだろうし、昭和天皇に嫌われたりするよな、と納得することばかりである。

 けっこう金回りのいい出版社らしい。なるほど、商売上手だし、さらにいろいろと資金の出所もあるのだろうか。今日も、慰安婦問題の真実がどうしたとかいうメールが届いた。こんなしくみになっているのだねと、社会勉強になった本。

東亜全局の動揺―我が国是と日支露の関係満蒙の現状

東亜全局の動揺―我が国是と日支露の関係満蒙の現状

  • 作者:松岡洋右
  • 出版社/メーカー: 経営科学出版
  • 発売日: 2019
  • メディア: 単行本
 

 (こ)