こんな本が昨年に出ていたとは知らなかった。榎本正樹『新海誠の世界』。
最初期の自主製作作品から『天気の子』まで、新海誠の全作品を読み解く論評集である。
第1章は、「最初期作品群」として、パソコンとの出会い、そして『彼女と彼女の猫』を初めとする初期の作品に光を当てる。『イースIIエターナル』のオープニングムービーは、今見ても色褪せない。
そして第2章からは、劇場用作品を1作ずつ紹介し、評論していく。
2002年2月2日、『ほしのこえ』の上映、そしてその衝撃。『雲のむこう、約束の場所』で描かれる青春の記憶。『秒速5センチメートル』の繊細な心理描写と、満を持して制作した大作『星を追う子ども』の「失敗」。そして、文学作品ともいうべき『言の葉の庭』を経て、『君の名は。』が公開される。
それまでの積み重ねがあったからこそ、『君の名は。』は国民的な大ヒット作品となった。大ヒットは、必然であった。
最終章は『天気の子』についての新海誠ロングインタビュー。監督が監督自身の言葉で作品を語るというのは、貴重である。
『すずめの戸締り』の公開まであと3週間。いよいよ――。
(ひ)