石井幸孝『国鉄 「日本最大の企業」の栄光と崩壊』(中公新書) ・佐藤信之『鉄道と政治 政友会、自民党の利益誘導から地方の自立へ』(中公新書)

 今年の10月14日で、鉄道開業150年!
 というわけで、鉄道関係の本を読むことにした。

 『国鉄』は、日本最大の企業であり、巨大官僚機構でもあった国鉄が、焦土の中から立ち上がり、高度成長を支えながら、次第に機能不全に陥り、最後は強制的に解体されて再生の道を歩むまでの、38年の物語である。
 著者の見立てでは、国鉄の失敗は、その発足時にすでに予定されていたことになる。敗戦の焼け野原からのインフラ整備には莫大な費用が必要で、安全性と定時性を確保しながら設備の増強を続けていくためには、発足したての国鉄の基盤はあまりにも脆かった。その結果、新幹線の建設費の膨張がトリガーとなって、雪だるま式に赤字が膨らみ、巨大組織の負の面ばかりが目立つようになっていった。分割民営化は必然だったということになる。ただし、3島会社については、想定外の超低金利の定着によって完全に見通しが破綻しており、企業単体の努力では解決できない状況にある。
 著者は国鉄ディーゼル車両設計に携わり、名機キハ81やDD51の生みの親。その後、経営サイドに回り、最後は国鉄分割民営化に携わり、JR九州の社長として黒字化と株式上場への道をつくった人。国鉄の歴史、組織の話、組合の話、鉄道のあり方についての話、そうした中に日本のディーゼル車や車両開発に関する1章があって、鉄分満載の1冊である。

 これを読んだ後に『鉄道と政治』を続けて読んだのだが、残念ながら著者の力不足は歴然としていた。雑多な話題について書き散らしてあって、まぁよく調べましたね、というのが感想。

(こ)