ロブ・デサール/イアン・タッターソル『ビールの自然誌』(勁草書房)

大先生の守備範囲は、相変わらず広いですね~~

 

「人と獣とを分かつ大きな特徴は2つ、未来に対する恐怖と発酵した酒への希求」なんだとか。

私、あまたあるお酒の中でもビールが大好きなのです。身体も心も元気にしてくれる、黄金色の魔法の水。

そのビールのことを、分子系統学者と古生物学者という、学問のスペクトルの極に位置するふたりがタッグを組んで、丸裸にしたのが本書。人類にとってのビールの歴史はもちろんのこと、ビールを科学的に分析し、発酵のメカニズムやビールが人間にもたらすさまざまな影響について分子レベルで解説したり、圧巻は、大麦やビール酵母ゲノム解析と統計分析からビールの系譜図を作成し、それを地図上にマッピングして軽やかに可視化するあたり、ほんとうに見事。

あたかも人間ドックに入れられたかのように、ありとあらゆる方向からビールが丸裸にされていく。複合知とはこういうことであり、まさに知に遊ぶ本である。

なお、ふたりともアメリカ自然史博物館の学芸員。つくづく懐が深い組織だと思う。

いかん、飲みたくなってきた。

(こ)