大滝世津子『幼児の性自認 幼稚園児はどうやって性別に出会うのか』(みらい)

 『貞観政要』、今月のNHK「100分de名著」で見ています。忖度しないこと、公正であること・・・。

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 ところで、うちの下のチビ(♀、もうすぐ4歳)が、最近「女の子」になってきた。これまではお兄ちゃんのマネばかりして、お兄ちゃんのお下がりをもらって喜んでいたのに、突然、口の利き方からお絵かきで描く人の表情や色使いまで、すっかりクラスの「女子」たちの仲間入りをしてしまった(機嫌が悪いと「もう、あそんであげへん」と言うようになったので、きっとそんなことも言われているのだろう、なかなか気苦労も多そうだ)。
 そんな園で、ある保護者さんが中心になって「ジェンダーフリー」化を進めようという動きがあって、職員の働き方改革や制服業者の廃業問題があって制服の見直しをしたかった園が渡りに船と乗ってきた。うちのチビの学年が、どうやら制服のスカートをはく最後の世代になるらしい。

 さて、本書は、ある幼稚園での参与観察を通して、幼稚園に入園したばかりの3歳児たちがはじめての集団生活を通して自身のジェンダーを認識していくプロセス(性自認)を社会学の方法論に則って記述したもので、東京大学に提出された博士論文を再構成している。学者一家に育った著者だけに、その記述と分析は非常に抑制が効いていて、隙がない。それでいて、著者の人柄が行間からにじみ出まくっているので、読んでいてほっこりする。さらに保護者目線で読むから、観察対象の園の光景が目に浮かぶようである。

 おもしろいのは第6章で、ある園児(♀、上にお兄ちゃんがいる)は「今はちっちゃいから女の子だけど、4歳になったら男の子になるの」と信じていて、実際に彼女は、自らの性についての認識が女の子と男の子の間で揺れ動きながら、最後は自分を男の子として認識して男子集団に帰属し、周囲もそれを認めるようになる。ジェンダーが主体的に選び取られたのである。

 そんなこんなで、女子集団の中で揉まれて、女子としての所作振る舞いを身につけているうちのチビは、これからどんな「女の子」になっていくのだろう。

 なお、著者は現在、大学を辞めて、生まれ故郷の鎌倉で、これまでになかった学童保育を立ち上げた。がんばれ、大滝さん。

幼児の性自認―幼稚園児はどうやって性別に出会うのか

幼児の性自認―幼稚園児はどうやって性別に出会うのか

  • 作者:大滝 世津子
  • 出版社/メーカー: みらい
  • 発売日: 2016/08/20
  • メディア: 単行本
 

 (こ)