デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(下)』(山田耕介ほか訳・文藝春秋)

勢いに任せて下巻まで読み通した。デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(下)』。

仁川上陸作戦の大成功に気を良くしたマッカーサーは、なんと中朝国境の鴨緑江まで米軍を進めさせるよう命じる。

極寒の朝鮮半島北部における、戦略的にほとんど意味のない壮大な目標。兵力の分散。敵勢力の軽視。伸びきった補給線。司令部と現場との乖離。「中国軍が参戦する」との情報を無視してまで断行したこの作戦は、待ち伏せをしていた中国軍の返り討ちに遭い、米軍史上まれにみる敗北をもたらした。まるで『失敗の本質』の米国版を読んでいるようである。

その後、現地のウォーカー将軍が事故死する。後任に選ばれたのはマシュー・リッジウェイ。有能な司令官である彼はボロボロになった米軍を立て直し、中国軍と対峙する。歴史は人が動かす。

裸の王様となったマッカーサーは、やがて中国への戦線拡大を声高に主張し始めるが、これは中国だけでなくソ連をも全面戦争に巻き込むおそれがあるものであった。ここに至り、トルーマン大統領はマッカーサー将軍を解任する。

膠着状態となった戦争は、1953年に休戦協定が結ばれる。軍事境界線は38度線に設けられ、これは戦争開始時点の国境線とほぼ同じであった。

巻末のインタビューリストが圧巻。10年以上を投じて調査・執筆された本書は、ハルバースタム最後の作品となった。

デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(下)』(山田耕介ほか訳・文藝春秋


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