デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(上)』(山田耕介ほか訳・文藝春秋)

伊坂幸太郎『777 トリプルセブン』、実は僕も読みました。
最初から最後まで、ずーっと面白かった!
今、刊行記念グッズのオリジナルTシャツを買うかどうか思案中。

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一度読みたいと思っていたが、なかなか手を出せずにいた。今回、ちょっと時間が取れたので読み始めてみた。デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争』。

1950年の朝鮮戦争を題材に取った、著者渾身のノンフィクションである。第二次世界大戦のような大国民戦争とも、ベトナム戦争のように米国の世論を二分した戦争とも異なる、いわば「忘れられた戦争」。これを著者は、様々な文献、手記や当事者への直接のインタビューを踏まえ、現代に再構築する。

冒頭はいきなり、朝鮮戦争中盤の山場ともいえる、1950年10月末頃からの中国人民軍の突然の参戦と、これによる米軍の壊滅的な敗走のシーンから始まる。何の前知識も与えないまま、読者を戦場の真っ只中に放り込む。慢心していた米軍の敗北は、まだまだ序章にすぎなかった――。

その後は時を開戦前に戻し、当時の米国をめぐる状況や、北朝鮮金日成と韓国の李承晩のこれまでの半生を紹介した後、朝鮮戦争の主役ともいうべきマッカーサーについて丁寧に描いていく。傲慢でわがまま、自己顕示欲にあふれた男。ハルバースタムの批判の筆は辛辣である。

上巻は、北朝鮮軍の突然の南進と、これに直ちに対応できないまま参戦し、やがて釜山周辺にのみ追いやられていく米国軍、そして「乾坤一擲の大バクチ」(420頁)ともいうべき仁川上陸作戦までを取り上げる。マッカーサーについて終始批判的なハルバースタムも、ここだけは「すべての偉大な司令官の生涯には傑出した戦闘がある。(略)マッカーサーの場合、それは仁川だった。」との伝記作家の言を引用して、間接的とはいえ評価している。

しかし、仁川上陸作戦の歴史的な大成功は、米軍、そして米国民に慢心を植え付けた。圧倒的な米国世論の支持の下、米軍は38度線を超えて北進。これにより毛沢東は、ついに参戦を決意――。

続きは下巻。
次にまとまった時間が取れるのは、いつになるか。

デイヴィッド・ハルバースタム『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(上)』


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