半藤一利・加藤陽子・保阪正康『太平洋戦争への道 1931-1941』(NHK出版)

 直木賞作品をレビュー(しかも2冊とも)していたなんて珍事のせいか、体調を崩して入院することになりました・・・いや、虫垂炎です、でも医療崩壊前夜の病院では入院手術も綱渡りで、なんとか予定を組めました。

 というわけで、右下腹部の痛みを薬で抑えながらのブログです。

 1868年が明治元年とすると、1945年は明治78年。
 1945年を戦後元年とすると、2022年が戦後78年。
 そろそろ、ひとつの国家の寿命が燃え尽きるころなのかもしれません。アベスガ政権を経て急激にこの国のかたちが溶解していくようすを目の当たりにしながら、いろいろと思うところはあります。

 本書は6つの「亡国」の分岐点を指摘する。①関東軍の暴走(満洲事変~満洲国建国)、②国際協調の放棄(リットン報告書~国連脱退)、③言論・思想の統制(5・15事件~2・26事件)、④中国侵攻の拡大(盧溝橋事件~国家総動員法制定)、⑤三国同盟の締結(第2次世界大戦勃発~日独伊三国同盟)、⑥日米交渉の失敗(野村・ハル会談~真珠湾攻撃)。何度も何度も引き返すチャンスはあったのに、それができなかった。

 新しいことは書かれていない。しかし、2017年に鼎談として企画され、2021年5月に書籍として完成した本書は、歴史探偵といったおおらかさがどこかに漂っていたこれまでの書籍とは異なり、かなり「亡国にいたる政治的意思決定の失敗」という点に踏み込んで話をしているように思う、あるいはそう読めた。

 半藤氏は最後に、「昭和の日本人というのは、非常に不勉強だと思います。」と喝破する。そして「今の日本人も同じように不勉強です。もしかしたら、今のほうがもっと不勉強かもしれません。」と、言葉を残す。

 ひとつ、報告をしておこう。
 古代から大暴走で中学の歴史の授業を進め、1ヶ月半を十五年戦争期の授業に充てた。「タイムマシンで1931~45年に戻れるなら、いつ誰に何を命じるか」という問いを出した。
 答えは大きく、満洲事変の事後処理と、日ソ中立条約/日米交渉失敗の2つに集中した。この学びを経て、若い彼らがどのように今を見るのだろう。

 みっともない歴史を、次の世代に引き継ぐわけにはいかない。

(こ)