湯之上 隆『半導体有事』(文春新書)

以前紹介した『葬送のフリーレン』がアニメ化! しかも…

・初回は「金曜ロードショー」で2時間スペシャル(史上初)!
・音楽はEvan Call(鎌倉殿の13人)!
・オープニングテーマはYOASOBI! エンディングテーマはmilet!

……絶対にヒット作にするぞという、作り手の本気度が伝わってきます。

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世界的な半導体不足がニュースになっている。なぜこのような状態になったのか。そもそも半導体をめぐる情勢は。…などと疑問が出てきたので、この本を読んでみた。湯之上 隆『半導体有事』。

半導体産業についての現状と、今後の問題点等について、様々な具体例を挙げながら説明を試みるものである。

一般に、この手の本は軸足がどこに置かれているのかが気になるが、本書は「半導体は経済安全保障を担う戦略物質」「半導体には地政学的リスクがある」等の風説には否定的な立場という(11頁)。実際、うわついたところはなく、長年にわたって半導体産業に関わってきた立場から、地に足のついた説明が展開されている(この点、本のオビで「米中戦争の引き金になる!」とあるのは編集部側の煽りすぎであろう。)。

中でも興味を引いたのが、台湾のTSMC半導体の受託生産(ファウンドリー)の分野で世界シェア約60%を占めるトップランナーである。同社が大成長した要因、そして同社をめぐる世界各国の綱引き状態はなぜ生じたか。

かたや日本。TSMCを熊本に誘致し、また半導体会社・ラピダスが「2027年までに2nm(ナノ)の先端半導体を量産する」と発表しているが、著者はこのいずれにも疑問を呈している。果たして日本の半導体産業は、また、失敗を繰り返すことになるのか。

時間があったら別のスタンスから書かれた本も読んでみたいところであるが、ひとまず勉強になりました。

湯之上 隆『半導体有事』(文春新書)


(ひ)