岩田清文・尾上定正・武居智久・兼原信克『君たち、中国に勝てるのか』(産経セレクト)

 今週はちょっと長い出張があったりして、ゆっくりと本を読む時間がとれなかった。出発前に、移動の機内や車内で読む本を買い込んだのだが、今回は小説ではなくて新書がメインとなった。そのうちの1冊。タイトルがうまいので手にしてしまった。安倍元首相の言葉らしい。

 内容は、台湾海峡有事に関する元自衛隊幹部による分析とシミュレーションであり、こういうケースのときには産経は最悪のシナリオを提示してくれるので、思考実験にはもってこいであった。

 本書による中国の台湾侵攻の予想は2024年から2027年。そのころには西太平洋におけるパワーバランスは米中逆転して中国優位になっているという分析。

 そのときにこの国はどう闘うのかという問題よりも、この国で生きていけるのか、という方が個人的には気になる。食糧自給率もエネルギー自給率もとんでもなく低いこの国における安全保障とは、どういうことか。コオロギ食べるとか言っている場合ではなく、余った牛乳を捨てて乳牛を殺処分している場合ではないはずなのだが。地方は疲弊して人がいなくなる。インフラは老朽化し、鉄道は寸断され、いざとなったら食糧を運べず武器弾薬を送れない。それに南海トラフ地震も首都圏直下型地震も富士山噴火もいつかは起きる。

 問うべきは「勝てるのか」ではなく「生き残れるのか」ではないのか。そして生き残るためにはどうすればいいのか。

(こ)