倉本一宏『藤原道長の日常生活』(講談社現代新書)

来年の大河ドラマ「光る君へ」の追加キャストが発表された。藤原兼家藤原道隆藤原道兼・・・といった人物も出てきており、ドラマではどうやら藤原道長が権力を把握するまでの過程も丁寧に描くようである。

藤原道長については、教科書に書かれていることくらいしか知らないので、ちょっと興味を持った。

まずは、山川出版社の「日本史リブレット」シリーズの大津透『藤原道長』で頭づくり。道長の半生やその政治について、最新の研究成果も踏まえながら、わかりやすく解説する。

本書によれば、道長は、外戚関係に基づいて政変や陰謀で専制的に権力を行使した人物ではなく、実際には摂関にはほとんどつかないまま、公卿の合議を統括したというのが政治的な特色であるという。新鮮な視点である。

大津透『藤原道長』(山川出版社

そして、倉本一宏『藤原道長の日常生活』。これは、道長自身の日記である『御堂関白記』に加えて、藤原実資の『小右記』や藤原行成の『権記』などの古記録を読み解くことにより、道長の人物像に迫っていこうとするものである。

まずは道長の感情表現について(第1章)。道長は、よく泣き、冗談を言い、怒りっぽく、他方で気弱な人物でもあった。小心と大胆、繊細と磊落――。様々な二面性が道長の人物像を浮かび上がらせる。

本書は更に、道長の宮廷生活や家族、信仰等にも踏み込みながら、併せて当時の人々の生活を描き出す。平安時代というのは、現在に比べて決して「劣った」時代ではなく、その時その時において、人々は一生懸命に生きていた。

さて、来年の「光る君へ」のキャストだが、まだ主人公・紫式部の主(中宮彰子)、夫(藤原宣孝)、親友(小少将の君)の発表がなく、また藤原道長のライバル・藤原伊周の発表もない。おいおい発表されていくのであろうが、今からちょっと楽しみなところもある。

倉本一宏『藤原道長の日常生活』(講談社現代新書



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