人間ドックに行ってきた。検査の合間の細切れ時間のお供には、アンソロジーがちょうどいい。断食明けの遅いランチ、そして食後の珈琲をいただきながら、続きを読む。
コーヒーにまつわる31編の短編集。湊かなえ、星野博美、よしもとばなな、向田邦子、村上春樹、内田百閒、外山滋比古、山口瞳、さらには寺田寅彦まで、それぞれのコーヒーへのこだわりが詰め込まれている。
作品の年代としては全体的に古く、昭和の文人たちのコーヒー談義が多く収録されているので、シアトル系が上陸する前の喫茶店の「珈琲」の香りがする。ただしそこには東京の文化サロンの薫りがして、ちょっと共感するにはどこか遠い世界のできごとのような距離感を感じてしまったことは残念。
そんな中で、コーヒーが好きではない阿川佐和子が、絶妙のテイストを添えている(「古ヒー」)。また柏木壽「京の珈琲」だけは舞台が(東京や軽井沢でなく)京都なので情景が頭にすっと浮かんだ。巻末の解説も、京都の名物書店・誠文社の店主による。
ともあれ、こぽこぽ。
(こ)