浦沢直樹×手塚治虫『PLUTO』(小学館)

『PLUTO』がアニメ化されるという。

『PLUTO』は、手塚治虫鉄腕アトム「地上最大のロボット」を浦沢直樹がリメイクした作品である。実は昔、途中までは読んでいた。今回、改めて最初から読んでみることに。

スイスのロボット・モンブランが山火事現場でバラバラになって発見された。別の現場ではロボット法擁護団体の幹部・ランケも遺体で見つかる。ユーロポールのロボット刑事・ゲジヒトは2つの事件を捜査するが――。

原作ではアトムが主人公だが、浦沢直樹の『PLUTO』は、多くの場面でゲジヒト視点で物語が進む。途中で差し挟まれる、スコットランドの執事ロボット・ノース2号の挿話が切ない。

第1巻の最後に、満を持してアトム登場。「おお、これがアトムか……!」と心地よい衝撃を受けたことを今でも覚えている。第2巻のラストではウランが登場。「そうきたか……」という意表を付く造形でありながらも、リアリティと説得力がある。

他にも、お茶の水博士、ヒゲオヤジ、田鷲警部など、おなじみの登場人物が浦沢直樹テイストで続々登場。中でも第4巻のラストで登場する天馬博士の造形が、これまた衝撃的である。そういえば原作でも他のキャラクターとは一線を画した描かれ方をしていた。

ところでこの『PLUTO』という作品世界には、アメリカ合衆国イラクの「大量破壊兵器」の保持を理由に突如侵攻した「イラク戦争」を示唆する描写が出てくる。攻める側と、攻められる側。戦争の大義。犠牲になる人々。『PLUTO』は、そのような戦争を(直接的ではないにしろ)描いた作品でもある。

浦沢直樹×手塚治虫『PLUTO』(小学館

『PLUTO』と並行して、原作に当たる手塚治虫「地上最大のロボット」も読んでみた。

手塚治虫鉄腕アトム 第3巻』(秋田書店

改めて読み比べてみると、『PLUTO』は「地上最大のロボット」を最大限リスペクトしていることがよく感じられる。ストーリーを大幅に再構築しながらも、要所要所は外さない。リメイクのお手本とでもいうべき作品である。



(ひ)