青山美智子『月の立つ林で』(ポプラ社)

「竹林からお送りしております、タケトリ・オキナです。かぐや姫は元気かな」

 

月をテーマに毎日10分間配信されるポッドキャストを聴く、5人の物語。

看護師を辞めた姉と、役者を志す弟。
かつて弟とコンビを組み、今も芸人を続けている地方出身の男。
娘が突然妊娠→結婚して家を出てしまったバイク整備士の父。
離婚した父に似ている自分を疎む母から離れたい娘と、離婚した父と一緒に暮らす同級生。
人気が急上昇しひとりの時間を求めて家族との関係がギクシャクし始めたアクセサリー作家。

5つの物語が、タケトリ・オキナの「ツキない話」を介して、満ち欠けを繰り返す月のように、再生し新たな一歩を踏み出していく。

タケトリ・オキナとは何者なのか。

 

猫だったり、神様だったり、カフェだったり、図書館司書だったり(エスキースは作風が違ったけれどコンセプトは変わらない)、それぞれの物語が少しずつ重なり合い、最後に一気に伏線が回収される、青山作品のいつものパターン。

 

忙しくて渇いてきた心に、今回も効いた。明日からまた、がんばれる。

(こ)