橋爪大三郎『パワースピーチ入門』(角川新書)

「なぜ安倍首相の会見スピーチは、心に響かなかったのか?」

コロナ禍の混乱にあって、私達はリーダーが発信するメッセージを待っていた。ドイツのメルケル、NYのクオモ、それに比べて、なんと日本のリーダーの言葉が貧しかったことか(安倍首相の言葉が響かないのは今に始まったことではないけれど)。

日本にもパワースピーチはあった。斎藤隆夫のいわゆる「三代演説」である。本書でもそのひとつ「国家総動員法演説」を例とする。透徹したロジックに裏付けられた余計な装飾のない文章が、信念を帯びてまっすぐに口から吐き出される。

パワースピーチは、テクニックを超えたものである。「口を開く人間と、耳を傾ける人間とのあいだにほとばしるスパーク」である。本書でも、安倍スピーチを(いちおう)添削している。しかしこれを安倍首相が読み上げても、はたしてパワースピーチになったかどうか。

やはり言葉には魂が宿る。

(個人的には、承久の乱の時の北条政子の演説が、日本を変えた最高のパワースピーチだと思っているのだが・・・) 

パワースピーチ入門 (角川新書)

パワースピーチ入門 (角川新書)

 

 (こ)