太宰治。中学生の頃に『斜陽』とか『人間失格』とか『富嶽百景』とかを読んだのだけれど,まあ一時的なものにとどまり,その後全く読んでいなかった。
先日,ふと書店の文庫コーナーで太宰の本が目にとまった。こういうの,中学・高校生くらいの時に読みこぼしてしまうと,そのまま一生読まなかったりするんだよな・・・などと勝手なことを思いつつも,せっかくなので読んでみることにした。とりあえず,代表作の一つ,『津軽』。
久々に読んでみて,思った。太宰,文章うまいなあ。
・・・何を今更と言われそうだが,実際そう感じたのだから仕方がない。『津軽』は,基本的には軽い文体の旅行記の体裁なのだが,内心の吐露あり,自虐あり,邂逅ありで,読者を飽きさせない。のみならず,終盤の「たけ」との再会場面は,さすが太宰。「ちょっと本気出せばこのくらい感動的な文章を仕立て上げることもできるんですよ」といった感じで,実力見せつけまくりである。
その勢いで,短編集『ヴィヨンの妻』も読んだ。こっちはこっちで,罪悪感とか自責の念とかが出まくりである。
新潮文庫編『文豪ナビ 太宰治』(新潮文庫)も読んでみた。平成16年刊行のナビ本である。ところどころに綿矢りさの名前が出てくるのが,ちょっと時代を感じさせる(芥川賞受賞直後だったか。)。収録されている島内景二「評伝 太宰治」が面白かった。
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