又吉直樹『第2図書係補佐』(幻冬舎よしもと文庫)

神様が目の前に現れて「どんな仕事でもやってもいいよ」と言われたら、コラムニストかエッセイストになりたい、と答えようかと思う。

天野祐吉「CM天気図」とか、中島らも「明るい悩み相談室」のような、あんなのを書きたい。懐が広くて奥行きが深くて、くすっと笑わせて、すっとぼけて、それでいてぐさっと突き刺さる、そんなのを書いてみたい。

さて、『火花』で一躍文筆家としての力量を世に知らしめたピース又吉氏だが、彼の魅力は小説よりもエッセイの方が堪能できる。

この『第2図書係補佐』は、書評という体裁をとりながら、実は本の紹介は最後の1段落数行だけで、基本的に自伝的なエッセイ集である。その舞台は小説よりも奇怪な芸人の世界なのだから、虚実混ぜ込んだ又吉ワールドが縦横無尽に展開される。

しかも、そこかしこに、本への熱烈な愛情がちりばめられている。

悔しいけれど、こんなエッセイが書きたい。

(こ)

 

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)

第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)