門井慶喜「銀河鉄道の父」(講談社)

 

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銀河鉄道の父」は,宮沢賢治の生涯を,その父・宮沢政次郎の視点から描いた作品です。

これがですね,おもしろい。
とにかく,父・政次郎の宮沢賢治に対するまなざしが,暖かいんです。
普通,小説では,父子関係っていうと,衝突とか,反発とか,その後の邂逅とかがテーマになりそうじゃないですか(志賀直哉の一連の作品とか)。でも,この作品はそういうのとは少し違う。とにかく,慈愛に満ちたまなざしで息子・宮沢賢治に接するんです。もちろん多少の反発もあります。対立もあります。でも一貫して根底に流れているのは,「父」の「息子」に対する深い愛情なんですね。

最後の方は少しだけ,うるっと来ます。
門井慶喜,また新たな境地を開拓しました。
(余談ですが,本作品は,文体がそこはかとなく司馬遼太郎の影響を受けているようで,そこも個人的にはツボです。)

銀河鉄道の父

銀河鉄道の父

(ひ)