「銀河鉄道の父」は,宮沢賢治の生涯を,その父・宮沢政次郎の視点から描いた作品です。
これがですね,おもしろい。
とにかく,父・政次郎の宮沢賢治に対するまなざしが,暖かいんです。
普通,小説では,父子関係っていうと,衝突とか,反発とか,その後の邂逅とかがテーマになりそうじゃないですか(志賀直哉の一連の作品とか)。でも,この作品はそういうのとは少し違う。とにかく,慈愛に満ちたまなざしで息子・宮沢賢治に接するんです。もちろん多少の反発もあります。対立もあります。でも一貫して根底に流れているのは,「父」の「息子」に対する深い愛情なんですね。
最後の方は少しだけ,うるっと来ます。
門井慶喜,また新たな境地を開拓しました。
(余談ですが,本作品は,文体がそこはかとなく司馬遼太郎の影響を受けているようで,そこも個人的にはツボです。)
- 作者: 門井慶喜
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/09/13
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
(ひ)