中嶋博行『検察捜査』(講談社文庫)

書店に行ったら中嶋博行さんの新刊が出ていた。っていうか何年ぶりの新刊だ。
調べてみたら、そもそもこれまで6冊しか本を出していなかった。今回ので7冊目となるらしい。

ちょっと懐かしくなってデビュー作を改めて読んでみた。『検察捜査』。

1994年のデビュー作にして、第40回江戸川乱歩賞の受賞作である。

弁護士会の大物が自宅で殺され、横浜地検の検察官・岩崎紀美子が担当となるが、事件は意外な展開を――。

約30年前のミステリであるが、思ったほど古さを感じさせない。設定にも現実とやや異なる部分があるが、さほどの違和感もない。むしろ、テーマとして司法制度のあり方をとらえたところに、スケールの大きさや着眼点の独自さというものが今でも感じられる。

ところで、ふと気になって乱歩賞の受賞者を見てみたところ、前年の第39回が桐野夏生さん(『顔に降りかかる雨』)、翌年の第41回が藤原伊織さん(『テロリストのパラソル』)。第44回は池井戸潤さんが受賞していて(『果つる底なき』)、今から見ると結構豪華な顔ぶれである。

中嶋博行『検察捜査』(講談社文庫)


(ひ)