小西マサテル『名探偵のままでいて』(宝島社)

3年余り前に当ブログで紹介した奥乃桜子『それってパクリじゃないですか?~新米知的財産部員のお仕事~』が、なんとこの4月からTVドラマ化! 確かに「どこかでドラマ化されないかなあ」とか書いたけれど、まさか実現するとは・・・。

さて、こちらは「第21回このミステリーがすごい!」大賞の受賞作。小西マサテル『名探偵のままでいて』。

小学校教師の楓(かえで)。祖父は現在、幻視が見えるレビー小体型認知症を患っていた。そんな祖父のところに楓は、身の回りで起きた「謎」を持ち込むと――。

6つの章からなる連作短編集であり、あちこちに古典ミステリへのオマージュが散りばめられている。

探偵役が話を聞いただけで謎を解いてみせるという、いわゆる安楽椅子探偵物なのだが、特筆すべきはその設定。認知症を患って介護を受けている探偵というのは、これまで例がなかったように思うし、ある意味、現代的でもある。その祖父を見る孫娘・楓のまなざしが優しい。

ところでこの作品、応募時のタイトルは「物語は紫煙の彼方に」であったが、単行本化するに当たり「名探偵のままでいて」と改題したという。旧題も悪くはないのだけれど、やはり改題後のタイトルの方がしっくりくる。装丁もいい雰囲気。

小西マサテル『名探偵のままでいて』(宝島社)


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