柞刈湯葉『SF作家の地球旅行記』(産業編集センター)

柞刈湯葉という覆面作家の正体はよくわからないのだけれど、元分子生物学者で大学の職を得ていたのだが、任期か何かの関係で職業作家となって中京圏から東京に移り住んだ人だ、ということは知っている。

文才のある(いわゆる)理系の科学者の文章は、ほんとうにおもしろい。

本書は彼が世界を日本を旅しながら書き連ねてきたブログをまとめたものなのだが、肩の力抜けまくりの洒脱さの妙に加えて、その発想と着眼点にいちいち敬服してしまう。

あえてカナダでケベックに行き、琵琶湖の島に上陸し、モンゴルで馬に乗り、静岡の相良油田に立ち寄り、チバニアンの地層も見に行って・・・。

そしておまけの月面旅行記と日本領南樺太旅行記は、SF作家としての面目躍如である。

いやぁ、正直あまり期待していなかったのだけれど、これは掘り出し物だった。

SF作家の地球旅行記

SF作家の地球旅行記

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(こ)