村上世彰『村上世彰、高校生に投資を教える』(角川書店)

  N高校という広域通信制高校がある。角川ドワンゴが経営・運営していて、かなり勢いのある高校である。中学のとき私が担任した生徒も高校からお世話になった。

 そこに「投資部」というのがあることは聞いていた。特別顧問は村上世彰氏なんだそうだ。村上氏はいろいろとあったあと、今はシンガポールを拠点にファンドを動かしているらしいが、その村上氏が10か月にわたって高校生に投資の手ほどきをした実践報告が本になったので手にしてみた。

 中身はいたってオーソドックスである。投資とは何か、お金がどうやって回っているのか、高校生にレクチャーがされたあと、村上財団から実際に20万円が提供され、生徒たちは株式運用を始める。会社四季報を見て投資先を決め、何回か「投資レポート」を出すらしい。

 こういうバーチャル株式投資はいくつかあるが(私も東証が提供している学校向けシミュレーションゲームを授業に導入している)、ほんとうにお金を動かすのは聞いたことがない。運用益は生徒のものになり、損失は村上ファンドが補填するらしいが、それでも購入するボタンを押すときのヒリヒリする緊張感は、まったく違うのだろう。生徒たちのなかなか運用はうまくいかなかったようだが、それもまた社会勉強。

 ただし、村上氏の投資哲学が一般的かというと、どうなんだろう。いろんな人の意見を聞きながら、試行錯誤しているうちに、自分なりのやり方を身に付けるのだろう。

 うちでやるとすれば、スカイマーク会長の佐山さんに来てもらえるかな。また違った投資哲学を教えてもらえそうだ。学校全体でやるのは大変だが、有志でやる分には、なかなかおもしろい取り組みだと思う。

 (こ)