ブリギッテ・シテーガ『世界が認めたニッポンの居眠り』(阪急コミュニケーションズ)

 教育学系の研究会でアメリカの高校についての報告書を読んでいたとき、生徒が居眠りしている記述がないことが話題になった。そのときに参加者のひとりである文化人類学の先生から紹介されたのが、これ。著者はケンブリッジの日本研究の先生で、れっきとした学術書である(原題は "Inemuri. Wie die Japoner schlafen und was wir von ihnen lernen konnen"「居眠り:日本人の睡眠とそこから学ぶこと」)。

 睡眠の効能、世界の睡眠事情などを紹介しながら、核心部分である「日本社会における居眠りの受容」について分析が進む。居眠りというパフォーマンスが周囲へのアピールとして認められ、周囲もそれを許容する。あるいは、「居る」ことの強制が満たされれば「眠る」ことは問題としない、という支配と従属の関係が、日本社会においては多く存在するということもある。教室での居眠りについても考察が進む。邪魔するなら寝てろ、という教師の姿勢も紹介される。

 日本も亜熱帯化してきた感じだし、スペインみたいにシエスタを制度として採り入れてもいいんじゃないの、と最近思っているのだが、どうやら文化としての睡眠を変えることは、そう簡単なことではないらしい。それならば自主的に会議でシエスタするとするか・・・。

 (こ)