島本理生・辻村深月・宮部みゆき・森絵都『はじめての』(水鈴社)

4人の作家が「はじめて〇〇したときに読む物語」をテーマにYOASOBIとコラボレーション! 島本理生辻村深月宮部みゆき森絵都『はじめての』。

・・・いやもうこんなのあり得ないでしょ。豪華すぎる。
当然のように発売日に本屋へダッシュ

まずは島本理生さん。当ブログでは過去に『ファーストラヴ』を紹介しています。

タイトルは「私だけの所有者」。テーマは「はじめて人を好きになったときに読む物語」です。冒頭作ということもあり、きっと直球の純情物語なんだろうなと思っていたら・・・「手紙」形式の作品、主人公はどうやらアンドロイド。いきなりの変化球でした!

最後まで読んで驚き、もう一度最初から読む。そこには別の世界が広がっていました。「はじめて人を好きになったとき」という言葉にも改めて納得。しかしまあ、「私だけの所有者」というタイトルといい、その内容といい、島本理生さんはいつもいつもギリギリのコースを突くなぁ。

次に辻村深月さん。当ブログでは過去に『かがみの孤城』『ツナグ 想い人の心得』を紹介しています(せんせいからも何冊か。)。

タイトルは「ユーレイ」。テーマは「はじめて家出したときに読む物語」です。・・家出?と思って読み進めていくと・・・これは、全ての「学校が嫌だと思っている人」、いや、全ての10代に読んでほしい物語でした。

つらいこととか、嫌なこととかいろいろあるけど、それでも――。最後の最後まで、辻村さんのいいところがぎゅっと詰まっていました。

3作目は宮部みゆきさん。当ブログでは意外にも未紹介でしたが、ざっと思いつく限りでも、『魔術はささやく』『龍は眠る』の初期作品群をはじめ、『火車』『蒲生邸事件』『理由』『模倣犯』などなど、いろいろお世話になりました。

タイトルは「色違いのトランプ」。テーマは「はじめて容疑者になったときに読む物語」です。・・・いや容疑者って(笑)。

冒頭から宮部ワールド全開。「細密清掃員」「境界人定管理局」などのパワーワードが並ぶ。すこしふしぎな世界に、あっという間に取り込まれてしまいました。

そして最後は森絵都さん。当ブログでは過去に『みかづき』を紹介しています。

タイトルは「ヒカリノタネ」。テーマは「はじめて告白したときに読む物語」です。高校生の由舞は、幼馴染の椎太に告白しようとするのですが・・・。

登場人物たちの会話が心地良い。話自体もテンポ良く進む・・・と思ったら、物語はちょっと意外な方向へ。そして――。

それにしても森絵都さんは、こういう10代の心情を描くのがうまい。直球ど真ん中のジュヴナイル小説でした。

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島本理生辻村深月宮部みゆき森絵都『はじめての』


(ひ)