今年はマックス・ウェーバーの没後100年に当たるということで,中公新書と岩波新書から相次いで評伝が出版された。こちらはそのうち中公新書版。野口雅弘『マックス・ウェーバー-近代と格闘した思想家』。
56年の生涯をたどりながら,ウェーバーの思想を俯瞰する意欲作である。
本書の特徴は,ウェーバー自身の著作にとどまらず,古今東西の様々な人物の著作・発言を引用しながら,ウェーバーの思想を浮かび上がらせたところにある。引用された人物は,同時代を生きたカフカやリルケ,ウェーバーの影響を受けたカール・シュミットや丸山眞男,さらにはロールズやアーレントといった近年の思想家にまで至っており,実に幅広い。
ところどころに現代日本の直面する政治問題・社会問題への言及もあって,なかなか読みごたえのある評伝となっている。上記の様々な人物の引用も含めて,まるで著者である野口雅弘氏の一流の「芸」を見ているようである。
- 作者:野口 雅弘
- 発売日: 2020/05/19
- メディア: 新書
(ひ)