野口雅弘『マックス・ウェーバー-近代と格闘した思想家』(中公新書)

今年はマックス・ウェーバーの没後100年に当たるということで,中公新書岩波新書から相次いで評伝が出版された。こちらはそのうち中公新書版。野口雅弘『マックス・ウェーバー-近代と格闘した思想家』。

56年の生涯をたどりながら,ウェーバーの思想を俯瞰する意欲作である。

本書の特徴は,ウェーバー自身の著作にとどまらず,古今東西の様々な人物の著作・発言を引用しながら,ウェーバーの思想を浮かび上がらせたところにある。引用された人物は,同時代を生きたカフカリルケウェーバーの影響を受けたカール・シュミット丸山眞男,さらにはロールズアーレントといった近年の思想家にまで至っており,実に幅広い。

ところどころに現代日本の直面する政治問題・社会問題への言及もあって,なかなか読みごたえのある評伝となっている。上記の様々な人物の引用も含めて,まるで著者である野口雅弘氏の一流の「芸」を見ているようである。


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