川越宗一『熱源』(文藝春秋)

新人離れした新人の,2作目にして超大作である。川越宗一『熱源』。
 
樺太生まれのアイヌ,ヤヨマネクフ。リトアニア生まれのポーランド人,ブロニスワフ・ピウスツキ。実在の人物であるこの2人を軸に,アイヌとは何か,そして文明とは何かを描いた骨太の歴史小説である。
 
樺太。日本とロシアとの間で,その領有が揺れた島である。ただ,そこに住んでいたのは,アイヌをはじめとする人々。自らの意思にかかわりなく,大国の間で翻弄されてしまう。はたして,アイヌは,滅びるべきなのか・・・。
 
「降りかかる理不尽は『文明』を名乗っていた。」――あらためてこの言葉の持つ意味の重さを思う。
熱源

熱源

(ひ)