フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』(河野万里子訳・新潮文庫)

新潮文庫の累計発行部数トップ10は,次のとおりだという(『新潮文庫の100冊 2020』より)。

1 夏目漱石『こころ』
2 太宰治人間失格
3 ヘミングウェイ老人と海
4 夏目漱石坊っちゃん
5 カミュ『異邦人』
6 武者小路実篤『友情』
7 川端康成『雪国』
8 太宰治『斜陽』
9 島崎藤村『破戒』
10 サガン『悲しみよ こんにちは』

・・・10位の『悲しみよ こんにちは』だけ,読んでいない。これはまずい。ということで読んでみた。

夏のコート・ダジュール。17歳の少女・セシルは,父とその恋人の3人で別荘に滞在していた。やがてそこに,亡母の知人であるアンヌが合流。セシルは・・・。

人の心というものは,そう単純にはできていない。また,人は規範どおりに行動するかというと,必ずしもそうではない。そこに人の悩みが生じ,そして文学が生まれる。セシルはアンヌのことをどう思っていたのか。あこがれか。反発か。父を奪われるかもしれないという嫉妬か。そしてなにゆえセシルは,このような行動にあえて出てしまったのか。

わずか18歳で,サガンは本作を発表した。サガンおそるべし,である。


(ひ)