フランシス・フクヤマ『リベラリズムへの不満』(会田弘継訳・新潮社)

「嘘は、とびきりの愛なんだよ?」

当ブログで2回も紹介した赤坂アカ×横槍メンゴ『推しの子』。4月からTVアニメ化されることとなり、その第1回(約90分)が3月から『【推しの子】Mother and Children』というタイトルで映画館で先行上映された。

予想をはるかに超えるクオリティ。特に終盤の演出はすばらしく、映画館のあちこちからすすり泣きの声が聞こえてきた。主題歌はYOASOBIの新曲「アイドル」。こちらも映画の内容にきっちり寄せており、これだけでも十分泣ける。

さて、その入場者特典の一つが、公開3週目から配布された、赤坂アカの書き下ろし小説『視点B』。全54頁もの作品であって、これはもう、別途お金を出して買ってもいい「本」のレベルである。

内容も、いい意味でファンの想像を超えるものであった。『推しの子』の書き下ろし小説で、生半可なものは出せない――そんな矜持が透けて見えた。

赤坂アカ『視点B』(【推しの子】Mother and Children 入場者特典)

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さて、前置きが長くなったが、今週読んだ本はこちら。フランシス・フクヤマリベラリズムへの不満』。

「近年、最も激しく攻撃されているのは、民主主義ではなくリベラリズムである」(21頁)とするフランシス・フクヤマ。現在、リベラリズムは、右派のポピュリストと左派の進歩派の双方から攻撃を受けているという。本書はそのリベラリズムの価値を原点に遡って解き明かし、再生への道を提示する。

リベラリズム」とは多義的な言葉であるが、本書でいうリベラリズムは、「古典的リベラリズム」、すなわち、法律や憲法によって政府の権力を制限し、政府の管轄下にある個人の権利を守る制度をつくることを指す。多様な政治的見解を包含する「大きな傘」としてのこの思想は、もはや時代遅れのものなのか――。

思えば学生時代に履修した「国際政治」の授業は、当時最先端であったフランシス・フクヤマほか2、3の論考を批判的に紹介してこれに考察を加える、というものであった。それからかなりの年月が経過したが、今なお論壇の第一線で活躍されていることに、素直に驚きを感じる。

フランシス・フクヤマリベラリズムへの不満』(会田弘継訳・新潮社)


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