夕木春央『方舟』(講談社)

こちらも本屋大賞ノミネート作品。夕木春央『方舟』。

山奥にある謎の地下建築。友人らや従兄とともに訪れてみたところ、地震が起きて閉じ込められてしまう。そんな時に殺人事件が発生し――。

ミステリにおけるクローズド・サークルといえば絶海の孤島とか雪山の山荘とかが定番だが、地下建築というのはちょっと例がないように思う。加えて、地下に閉じ込められた緊迫感と、殺人事件が発生した緊迫感。なかなかの設定である。

物語が進み、終盤に探偵役のキャラクターが全員を集めて推理を披露。きっちりとミステリの古典文法に則った展開となるが・・・

・・・えっ!?
怖い怖い怖い!!

思わず最初から二度読みするが、確かに手掛かりはあちこちに提示されていた。どこまでもフェアな作品である。

本格ミステリのアイディアというものは既に出尽くしたのではないかとも思っていたが、まだまだ全然そんなことはなかった。現役の作家さんたちは、次から次へと読者の想像を超えるアイディアを生み出していく。脱帽。

夕木春央『方舟』(講談社


(ひ)