米澤穂信『黒牢城』(角川書店)

 織田信長に反旗を翻した荒木摂津守村重は、有岡城に立てこもっている。地下の土牢には、黒田官兵衛が幽閉されている。

 ある日、安部二右衛門が織田方に寝返った。人質の息子・自念を村重は、城内の反対を押し切って殺さずに、柵の中に閉じ込めておいた。その夜、自念は何者かに矢を射られて殺される。しかも撃たれたはずの矢が見つからない。誰がどうやって自念を殺したのか・・・?
 容疑者は6人。いずれもアリバイがある。
 困った村重は、官兵衛に策を求めた。官兵衛は答えない。
 去り際に官兵衛が1首詠む。
 「あら木弓いたみのやりにひはつかず いるもいられず引もひかれず」

 ・・・犯人は?

 織田軍に包囲され、頼みの毛利が来る見込みはほぼ消え去り、絶望的な籠城戦が続く中、ミステリーは続く。

 夜討ちで敵将を討ち取ったのは誰か?
 密使・無辺を殺したのは誰か?
 無辺殺しの犯人を暗殺しようとしたのは誰か?

 合戦小説としても、十分読み応えがあった。
 戦国ミステリーは、二度おいしい。

 それはそうと、村重を小馬鹿にしながら謎解きのヒントを出す官兵衛(役の岡田准一)が、途中から、執事の影山(役の櫻井翔)と重なって仕方なかった。
 「お嬢様の目は節穴ですか」 

 (こ)