萩尾望都『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)

 竹宮惠子『少年の名はジルベール』が最初に世に出されたのは2016年。回顧録でありながら、どこかしら萩尾望都への詫び状のようにも読めた。

 素人の自分でもそうだ。もうひとりの当事者の声が聞きたい。

 5年経って、 半世紀にわたる封印が、いちどだけ解かれた。

 ふたつの若い才能が出会い、開花し、ぶつかった。

 ゴッホは耳を切り、萩尾も心身を病んだ。そういうことだ。

 (こ)