播田安弘『日本史サイエンス』(講談社ブルーバックス)

空想科学読本」とか、科学の力でいろんなものを解き明かしてみようという試みは、楽しいものである。
本書は、 造船技師の著者が、蒙古襲来・秀吉の中国大返し戦艦大和の3つについて、造船あるいは物流という観点から、「謎」を解き明かすものである。

個人的には蒙古襲来がいちばんおもしろかった。元軍の軍艦を図面を引いて再現し、当時の玄界灘から博多湾のようすをシミュレーションするあたりは、さすがである。元軍は玄界灘の荒海で体力を消耗し、兵站に失敗し、最後は走錨が発生して大混乱に陥る。迎え撃つ鎌倉武士たちの統制のとれた戦いの前に、元が敗れたのは必然だという結論になる。

国土交通省の河川工学の技師さんが古代の水利を検証して、治水と物流という観点から古代の都を再現した論文を読んだことがあるのだが(松浦茂樹「大和盆地と古代ヤマト王権の成立」)、技術者の視点で描かれる歴史は透明感があってよい。