森見登美彦『熱帯』(文藝春秋)

以前この欄で紹介した深緑野分『ベルリンは晴れているか』ですが,なんと,今年度の「このミステリーがすごい!」の2位,「週刊文春ミステリーベスト10」の3位に入りました! 決してメジャーな作品ではないにもかかわらずこの順位! いや~,うれしい。

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さて。

今年一番の「怪作」である。森見登美彦『熱帯』。

最後まで読んだ人間はいないとされる小説『熱帯』を巡る物語・・・なのであるが,これが一筋縄ではいかない。複雑な入れ子構造。メタフィクションメビウスの輪のような,クラインの壺のような感覚に陥る。どこまでが真実で,どこからが虚構なのか。そもそも自分は今,この小説の「どこ」にいるのか。

不思議な作品である。読み終わって2,3日たつが,まだ小説の中をさまよっているような感じがする。

なお,読了後に気づいたのだが,この本の装幀は・・・。また,Amazonでは・・・。こういう遊び心,僕は好きだなあ。

熱帯

熱帯

(ひ)