井上寿一『戦争調査会 幻の政府文書を読み解く』(講談社現代新書)

 この1週間は、文芸書ではなく、新書ばかり読んでいた。
 新書というのは玉石混交で、こんなん週刊誌レベルやん(金返せ)、というのから、学術書としても一級品のものまであるわけで、そんな中でアタリを手にできるかどうか、ドキドキしながら本をレジに運ぶ(あるいはアマゾンのカートに入れている)。
 ちなみに今週読んだ7冊は、大アタリ2、アタリ2、並2、ハズレ1。けっこう悪くない。

 大アタリのうちの1冊はこれ。 

 1945年10月、幣原内閣は「敗戦の原因及び実相調査の件」を閣議決定し、ふたたび戦争の過ちを犯さないために、「戦争調査会」を設置して、なぜ開戦にいたったのか、なぜ拡大を防げなかったのかを、政治・外交・軍事・経済・思想・文化などの多角的な観点から徹底的に究明しようとした。
 しかしこの調査会はGHQによって廃止され、日本人の手によって戦争責任を検証する機会はふたたび訪れることはなかった。本書はこの調査会の調査記録を復元し、歴史学者ならではの手堅い手法によって、調査会に代わって「なぜ道を誤ったのか?」を再検証する。
 それとともに、調査会が敗戦直後の政治状況の荒波に巻き込まれ、その困難の中にあってもメンバーたちの固い決意によって少しずつ調査が進んでいくようすが描写される。さながら、ドキュメンタリー番組を見ているようでもある。1冊で二度おいしい。

 これだけの本を買っても、1000円でおつりがくる。新書バンザイ。

 (こ)