深沢七郎『楢山節考』(新潮文庫)

○□メガネの成田某助教だか助教授だかが、年寄りは安楽死うんぬんとおっしゃったのを聞いたとき、ふと緒形拳の映像が頭によぎったので、そういえば原作を読んだことがないな、よし、読むか、というわけで、アマゾンで中古をポチ。
届いた本は、ていねいに蠟紙で包装されていて、目次の楢山節考のところに「4.11.14」の書き込みがあった。以来30年間、文庫本の棚に大切に並べられていたものが、遺品の処分か何かで古本屋に流れていったのだろう。

 

楢山節考」のことは、恥ずかしながら名前と内容しか知らなかった。1956年にギタリストとして活躍していた深沢七郎が42歳にして発表した衝撃のデビュー作で、三島由紀夫正宗白鳥らがこぞって大絶賛したのだそうだ。「楢山節」も深沢七郎による創作で、楽譜もついていた。

他に3編の短編とともに収録。精神を病んだ妻との物語「月のアペニン山」、大都会東京の若者たちの刹那的かつエネルギッシュな日常を切り取った「東京のプリンスたち」、正宗白鳥の死に寄せた「白鳥の死」。どれもなんだかしっくりこなかった。なんでだろう。

 

楢山節考」自体は、間違いなく傑作だ。
ただ、それ以外のことにすごく意識が行ってしまい、「楢山節考」だけを取り出して論じることは難しかった。

結局、○□メガネが言っていることはろくでもないということは確認できたけど。

(こ)