今村翔吾『じんかん』(講談社)

まったく新しい松永久秀の誕生である。今村翔吾『じんかん』。

天正五年。松永久秀が謀反を起こしたとの報が,織田信長に伝えられる。信長は,笑みを浮かべながら,久秀の壮絶な半生を小姓に語り始めた・・・。

戦国の梟雄とされている松永久秀であるが,本書での彼はがらりと異なる。貧困,暴力,無秩序・・・。人の世の理不尽に悩み,苦しみ,そして立ち向かおうとする等身大の人間として描かれている。むろん,小説であるがゆえに,創作に係る部分も多いだろう。けれども,その創作に係る部分があるからこそ,戦国の世を必死に生き抜こうとする姿がありありと現れてくるのである。

これだから,歴史小説は面白い。

そういえば,『麒麟がくる』での松永久秀像も評判が良いようだ(見てないけれど・・)。将来は大河ドラマの主人公,なんてこともあるのだろうか。

じんかん

じんかん


(ひ)