福和伸夫『必ずくる震災で日本を終わらせないために。』(時事通信社)

 25回目の1.17を迎えた。あの朝、9時から始まる試験のために一夜漬けの追い込みをかけていたところ、下からドンと突き上げがきて、部屋が平行四辺形になった。京都は震度5であったが、試験が終わって入った西宮や神戸の姿は、今でも忘れられない。南海トラフ地震も必ずくるけれど、大都市直下型地震もまた、いつか必ずくる。

 著者は建設会社に勤務した後、大学に戻り、現在は名古屋大学減災連携研究センター長である。「減災連携」という名の示す通り、行政や企業の担当者を巻き込み、ホンネの議論をぶつけ合いながら、来るべき震災の時に中京圏で何が起きるかをシミュレーションし、対策を練り上げていく、地道な作業を積み重ねている。電気が供給されない、水がない、ガスがない、石油が入ってこない、病院は機能しない・・・。

 言えば言うほど、日本の評価が下がってしまう問題です。夢のある話ではありません。江東デルタ地帯でやろうとしている東京オリンピックパラリンピックも止まってしまうし、埋立地での大阪万博もできなくなってしまう。
 危険なところに超高層ビルを建て、デべロッパーが儲け、そのお金が政治に流れていくようなシステムは成り立たなくなる。お金儲けの立場からは、言ってほしくない、見たくない部分がいっぱい。見たら、いろいろ不都合になるでしょう。でも、見なければなりません。

 南海トラフ地震からの復旧は、3日や1週間で終わるようなものではなく、個人レベルで備えることができることには限界がある。それでもやはり、まずは個人ができることから始めるべきなのだろう。必ずくる震災で日本を終わらせないために。

必ずくる震災で日本を終わらせないために。

必ずくる震災で日本を終わらせないために。

 

 (こ)