橋本治『思いつきで世界は進む』(ちくま新書)

先ごろ亡くなった橋本治について,橋爪大三郎が熱烈な追悼文を寄せていた。
 
 
そうか,このお二人,面識があったんだな。・・・などと思っていると,今度は大澤真幸橋本治『思いつきで世界は進む』を書評欄で取り上げていた。面白そうだったので早速読んでみた。
 
橋本治,最後の時評集とのことである(とかいいつつも,今後もまだまだ刊行されそうだが・・・)。世間が何となく一つの方向を向いているときに,「いや,それはどうなの?」と別の角度から意見を投げかける。橋本治の筆は,短くも鋭い。
 
個人的には,世界情勢を「時計」というキーワードで眺めた「時間は均一に進んでいないの?」(194頁)や,トマ・ピケティを枕に「世界を覆う」理論について懐疑を示した「『世界は一つ』でいいのかしら?」(200頁),SNSからアメリカ・北朝鮮情勢までをばっさり論じた「自己承認欲求と平等地獄」(216頁)などが面白かった。
 
ところで,橋本治の文章,大学入試の現代文では頻出なんだそうな。橋本治を読んで育った人たちが,もうそんな地位(大学入試の出題者側)にいるのだと思うと,ちょっと感慨深いものがある。
思いつきで世界は進む (ちくま新書)

思いつきで世界は進む (ちくま新書)


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