中山元『アレント入門』(ちくま新書)/仲正昌樹『悪と全体主義―ハンナ・アーレントから考える』(NHK出版新書)

ハンナ・アーレント。今ちょっとしたブームである。
トランプ政権の誕生後,全米でその著作が再び売れ出した。日本でも昨年,『全体主義の起原』と『エルサレムアイヒマン』の新版が出版された。このうち『全体主義の起原』はNHKの「100分de名著」でも取り上げられ,そのテキストは直ちに増刷となった。

僕も前々から興味はあったものの,いきなり『全体主義の起原』とかを読破するのはハードルが高そうなので(その昔,佐々木毅が「あまり読みやすい作品ではない」と言っていたことが個人的に尾を引いているのかも・・・),まずは入門書で基礎固めをすることにした。中山元アレント入門』と,仲正昌樹『悪と全体主義ハンナ・アーレントから考える』である。前者は昨年出版され,後者は今年出版されたものである(やっぱりブームなんだな。)。

中山元仲正昌樹。それぞれがそれぞれの切り口でアーレントを紹介し,解説しているのが興味深い。

アーレントは,国民国家の崩壊後の世界において,一人一人がバラバラになっている「アトム化した状態」を大衆の特徴だと捉えた。どのような社会集団にも属さず,集団の利益に自己を同一化できない孤立した大衆は,自らに所属感を与えてくれる空想的なイデオロギーに惹かれる。そして,力強い指導者に服従することにより,その指導者と自己を同一視して全能感にひたり,自らの無力感から逃避する。

アーレントの分析は,現代社会においてもなお説得力を持ち続ける。

アレント入門 (ちくま新書1229)

アレント入門 (ちくま新書1229)


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