『ヨハネの黙示録』(小河陽訳,講談社学術文庫)

再び『日経おとなのOFF』8月号から。

名著特集の「宗教書」のコーナーで,『法華経』と並んで紹介されていたのが『聖書』である。
『聖書』かあ・・・。読んだ部分と読んでいない部分とがあるなあ。いや,むしろ読んでいない部分の方が圧倒的に多いか。
・・・などと考えながら書店の新刊コーナーを歩いていると,講談社学術文庫の『ヨハネの黙示録』の注釈付き翻訳書が積まれていた。講談社学術文庫だったら安心だよな,とか,まあ,今読まなかったら一生読まないかも,とか思って購入。

中学・高校の宗教の時間とかで「キリスト教」について教わる時間はそれなりにあったが,その内容は,「神の愛」や「隣人愛」といった普遍的な価値観の話が多く,あとはキリストの「奇蹟」や「復活」の話といった程度で,終末論の話というのはほとんど聞いた記憶がない(覚えていないだけかもしれないが)。でも,大人になってみると,この終末論,キリスト教の中では実は結構重要な教義であるように感じられてくるのである。マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で出てきた「予定説」なんかは代表例だが,要するに,キリスト教というものは,終末論を知っておかないと理解が深まらないのではないか,と。

・・・さて,『ヨハネの黙示録』を読んでみた感想は,二つある。

一つめは,人間の歴史というのは,戦争とか,迫害とか,大雨とか洪水とか大地震とか火山の噴火とか,そしてこれらによる大飢饉だとかに何度も見舞われた,まさに苦難の歴史であったのだなあということ。このことを改めて感じさせられた。

そして,二つめは,この『ヨハネの黙示録』,西洋の歴史の中で着実に,そして幅広く受け入れられていたということ。この講談社学術文庫版では,各場面について描かれた図版が,中世のものを中心に,本当に数多く収録されている。西洋の人々にとっては,この黙示録の物語は,まさに「自分たちの物語」であったのだろう。

ヨハネの黙示録 (講談社学術文庫)

ヨハネの黙示録 (講談社学術文庫)

(ひ)