今村翔吾『塞王の楯』(集英社)

 10年ほど前に「ほこ×たて」というバラエティ番組があって、「絶対○○なもの」どうしが対決してどちらが勝利するか、というもので、けっこう好きだった。

 本作品は「絶対に落ちない石垣」と「絶対に落とす鉄砲」が対決する。
 舞台は太閤亡き後の天下分け目の戦いが始まった、伏見城、そして大津城である。近江・穴太(あのお)衆の「塞王」源斎とその後継者・匡介、そして同じく近江の国友衆の「砲仙」彦九郎とが、激しく至高の業で激突する。

 匡介が改修を施して完全な要塞と化した大津城に立てこもる3000の京極勢と、それを取り巻く西軍の4万の大軍。美濃での決戦の時まで西軍を足止めできるか。穴太衆が城を強くすれば、西国無双・立花宗茂や彦九郎たちはそれを無力化にかかる。それを見てさらに匡介は次の手を打つ。まさに息もつかせぬ攻防が繰り返される。

 彼らの対決を取り巻く登場人物の激突も、とても魅力的である。穴太衆「飛田屋」の面々、大津宰相・京極高次とその妻・初、侍女の夏帆、京極家の人々、西国無双・立花宗茂甲賀衆、などなど。けっこう胸アツなシーンが最初から最後まで続く。

 552ページ。
 直木賞については大先生の守備範囲だとは思いつつ、あまりにおもしろかったので、つい・・・。

(こ)