彩瀬まる『新しい星』(文藝春秋)

どうせなら普段は読まないような本を,と思って選んだのがこちら。彩瀬まる『新しい星』。

8編の小作品からなる連作短編集である。

就職して,結婚して,子育てをして・・・という人生は「普通」なのか。「普通」から一度でも脱落してしまうと,もはや幸福な人生は歩めないのか――。4人の主人公は,悩み,もがきながらも,毎日を懸命に生きていく。

若いころ,というか子供のころは,とにかくパァーっと明るい作品ばかり読んでいた。でも大人になるにつれ,徐々に,切なくて悲しくて,それでいてどこかやさしい雰囲気の漂う作品にも惹かれるようになってきた。嗜好の変化,といってしまえばそれまでなのだろうけれど,まあ人生いろいろあるよね,という視野の広がりが影響しているのかもしれない。

多くの人がこの作品を手に取れば,世の中がほんの少し,やさしい社会になるかもなあ,などと思いながら読み終えた。

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彩瀬まる『新しい星』

 


(ひ)