谷川主計と杉永幹三郎は小さい頃からの無二の親友である。ある日、谷川は大砲の暴発事故で聴力を失う。その谷川に近づいてきたのが、倒幕に向けて彼と志を同じくする梓久也だった。梓の導きで佐幕派の重鎮・真壁を暗殺しようとした谷川であったが、そこにいたのは親友の杉永であった・・・。
山本周五郎によるこの短編時代劇の傑作を下敷きとして成井豊と真柴あずきが演劇集団キャラメルボックスの20周年記念全国ツアーに向けて書き下ろしたのが「TRUTH」である。
上田藩士の弦二郎は鉄砲の暴発事故で聴力を失ってしまい、闇夜に親友・英之助を誤って斬り殺してしまう。しかしそれは藩内の陰謀によるものであった。
「失蝶記」では、谷川と梓の決闘が始まる直前に話は終わり、勝負の結果は読者の想像にゆだねられる。「TRUTH」は違う。決闘に勝利した弦二郎は鏡吾を殺さず「どんなに苦しくても、生きろ」というメッセージを残して、昇る朝日の中で幕が閉じる。
今年の文化祭での演劇では「TRUTH」を上演しました。激動する時代の荒波に巻き込まれながらも、友情を胸に必死で生き抜いていこうとする若者たちを堂々と演じきった生徒たちに、会場からは惜しみない拍手が浴びせられました。
(「別冊文藝春秋」1959年10月掲載作品)
(こ)