東シナ海に面した外海(そとめ)は、潜伏キリシタンの村であり、遠藤周作『沈黙』の舞台となったといわれる。国道沿いには「沈黙の碑」が建てられて、角力灘を見下ろす岬の上には3万点もの彼の遺品が納められた遠藤周作文学館がある。
その外海に明治の初めにやってきて、「外海の太陽」と呼ばれたひとりの神父がいた。マルコ・マリー・ド・ロ神父である。
神父の生涯を描いた本書は少女マンガのタッチなので、ちょっと盛りすぎ、美化しまくってるんだろうと思っていたのだが、知れば知るほど、この神父、マンガの世界から飛び出してきたようなすごい人だったらしい。
セレブ(貴族の息子でお小遣い3億円ほど持って来日しその私財を惜しげもなく投入)で、インテリ(建築・印刷技術・医学・薬学・農業・教育・経済学・産業振興・経営に優れる)で、長身で、イケメンで、笑顔が素敵で、どんな人にも優しくて、フェミニスト(女子教育に尽力)で、子どもにも大人気、ときたら・・・。
むしろ外海は、禁教の時代の迫害という暗黒の歴史の中でではなく、ひとりの神父によるまちづくりとひとづくりの歴史が息づく明るい村として、今を生きている。世界遺産登録された白亜の出津教会堂はド・ロ神父の手によるものであり、外海のランドマークとなっている。
「日本二十六聖人記念館」「大浦天主堂」「外海」と訪れることで、日本のキリスト教の歴史が一本の線でつながる。
その外海に、中学生たちを連れて、再来週お邪魔してきます。
*なお、ド・ロ神父についての研究書としては『ある明治の福祉像』(NHKブックス、絶版)がもっとも詳しい(・・・と学芸員さんに教えてもらった)。
ある明治の福祉像―ド・ロ神父の生涯 (1977年) (NHKブックス)
- 作者: 片岡弥吉
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 1977/01
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(こ)