瀧羽麻子『ありえないほどうるさいオルゴール店』(幻冬舎)

たまには心安らぐ連作短編集を。ということで,瀧羽麻子『ありえないほどうるさいオルゴール店』。

運河のある北の町でひっそりと営業しているオルゴール店。その店主にはある「能力」があった。“お客様の心に流れる曲”を仕立ててくれるという・・・。

1作目の「よりみち」で読者の心をつかみ,2作目の「はなうた」で軽く変化球を投げる。その後も,このちょっと不思議なオルゴール店を軸に,心優しい話が続いていく。

それにしても,オルゴール店というのはいい着想だと思う。それぞれの物語の中の曲がどんな調べなのかは,読者にゆだねられている。その分,想像力が膨らむ。

個人的には,女の子4人の友情を描いた「おそろい」と,老夫婦のちょっといい話「おさきに」が良かった。

号泣はしないけれども,いずれも心にしんみり染み渡るよい話である。

ありえないほどうるさいオルゴール店

ありえないほどうるさいオルゴール店

(ひ)