深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)

敗戦後のベルリンを舞台に,一人の少女の生き様を描く。深緑野分『ベルリンは晴れているか』。

1945年7月,4か国統治下に置かれたベルリン。音楽家のクリストフ・ローレンツは,毒による不審な死を遂げる。アメリカ軍の兵員食堂で働く少女・アウグステは,このことをクリストフの甥に告げようと旅立つが・・・。

この小説は,ミステリである。ミステリであるが,それ以上に,圧倒的な筆力をもって,読者を当時のベルリンの世界に引きずり込む。がれきの街。焦土。人々の混乱。今日明日をも知れぬ運命。僕たちは,当時,ドイツで,そしてベルリンで何が起きたかを知識としては知っている。しかし,知識として知っていることと,それを現実に体験することとは,大きな違いがある。この小説は,その架け橋となる作品である。

ベルリンには以前,仕事で短期間滞在したことがある。町のそこかしこに,戦争の痕跡があえて残されていた。ベルリンは,戦争の歴史を現在に伝える町である。

ベルリンは晴れているか (単行本)

ベルリンは晴れているか (単行本)

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