知念実希人『ひとつむぎの手』(新潮社)

年に一度の大イベント・本屋大賞。先日発表されたノミネート作品は,以下の10作品です。なお,発表時までに読み終え,当ブログで紹介していた作品は太字にしました。

三浦しをん『愛なき世界』(中央公論新社
平野啓一郎『ある男』(文藝春秋
木皿泉『さざなみのよる』(河出書房新社
瀬尾まいこ『そして,バトンは渡された』(文藝春秋
森見登美彦『熱帯』(文藝春秋
・小野寺史宜『ひと』(祥伝社
知念実希人『ひとつむぎの手』(新潮社)
・芦沢央『火のないところに煙は』(新潮社)
伊坂幸太郎『フーガはユーガ』(実業之日本社
・深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房

・・・このように,何と10作品中7作品が当ブログで紹介済み!

まず,当ブログでノミネート入りを予想した5作品(『そして,バトンは渡された』『ベルリンは晴れているか』『フーガはユーガ』『愛なき世界』『ある男』)の全てが,実際にノミネートされました!

そして,直近の直木賞でイチオシにしていた作品(『熱帯』。残念ながら受賞は逃しました。)と,その前の直木賞でイチオシにしていた作品(『さざなみのよる』。何と直木賞候補作にすらなりませんでした・・・)もノミネートされました!

それにしても,今回の候補作は粒ぞろいですね。どれが大賞を受賞してもおかしくないくらい。まれにみる混戦となりそうです。個人的には,こんな時代だからこそ読まれてほしい『そして,バトンは渡された』,小説としての完成度の高かった『ある男』,戦中の,そして戦後の大混乱を市民の目線から描いたミステリ『ベルリンは晴れているか』あたりを押したいところです。・・・そうそう,ドラマのスピンオフですが『さざなみのよる』もよかったなあ・・。

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というわけで。

ノミネートを受けて,ちょっと読んでみた。知念実希人『ひとつむぎの手』

大学病院に勤務する平良祐介は,一度に3人もの研修医の指導を命じられる。このうち少なくとも2人を入局させれば,念願の心臓外科医への道が開けるかもしれない。しかし,平良の指導は空回りしてしまい,さらに謎の怪文書が医局内に出回って・・・。

昨年の本屋大賞では『崩れる脳を抱きしめて』がノミネート入りした知念実希人。2年連続のノミネートとなった。『崩れる脳を抱きしめて』は恋愛要素がかなり強めで,ちょっと読んでいて気恥ずかしいところもあったが,今回は大学病院の医局ものである。組織。出世。理想と現実。様々な要素が絡み合い,大人が読んでも楽しめるエンタメ小説に仕上がっている。

読んでよかったな,と思える作品。よし,僕も前を向いて頑張ろう,と。

ひとつむぎの手

ひとつむぎの手

(ひ)